ネクロマンサー11
ネクロマンサー11
「しかし、この街は本当に賑やかですね」
白いローブを纏った華奢な体つきの男が、食料店の主に問い掛けた。
その顔は少し惚けたような、眠たそうな表情―彼の目が、垂れ目だからそう見えるのだが―をしているが、彼自身はその自覚はないし、惚けているわけでも、眠いわけでもない。
「そりゃあ、皆、明日を生きる希望がありますから」
主人は実に爽やかな笑みをユートに向けた。
微笑み返すユート。
「それでも、皆が皆明日に対して希望を持っている、と言うのは言い過ぎではありませんか?この世界には悩みも、苦しみもあります」
笑顔を崩さずに語り掛けるユートだが、その内心は主人には読み取れない。
「確かに絶望に心を支配された時期もありましたが…一番きつい時期を越せば、人間は強くなるものですよ」
相変わらずユートに笑顔を向ける主人。
「父ちゃん、どうしたんだい?」
店の奥からその主人の息子であろう男の子が顔を出してきた。
「こらっ、コウ。」
一応、窘めているものの、その口調には息子に対する愛情が滲み出ている。
主人がそう言うと、彼は舌をペロッ、と出して、街中に駆けて行った。
「元気なお子さんですね」
ユートが苦笑いしながらそう言うと、主人は頭を掻く。
「いやぁ〜、面目無い。実は息子は最近戻ってきたばかりなので……」
「『死霊使い』の『死人返り』ですね」
ユートの少し惚けた顔が引き締まっている。こういった表情をする時の彼からは静かな迫力さえ感じられる。
「え、ええ。月夜様に『死人返り』を息子に施して頂いて。しかも月夜様は無償で息子を生き返らせてくださって」
主人は本当に『月夜』なる人物に感謝しているようで、彼女が住んでいるであろう城の方角に向かってお辞儀をした。