ネクロマンサー14
ネクロマンサー14
体力と呪力の関係から、一日に行える『死人返り』は一人、いや、それでも多い位だ。そして、死人の体の一部分、例えば遺骨とか、髪の毛とか、そういったものがなければ『死人返り』は出来ない。そのせいで、やっとの思いでこの街を訪れた人を、更なる絶望の淵に落としてしまったことも、少なからずあった。その度に月夜は胸を痛めてきたのだ。
「俺には何がそんなに楽しいのか理解できない」
アシュタルはなおもぶっきらぼうにそう言った。
そんなアシュタルに月夜は、
「大丈夫。アシュタルにも、いつかきっとわかる日がくるよ」
明るい口調でそう言いながらアシュタルの背を軽く叩く。
「いつか、というのはどの位先のことだ?」
アシュタルのその問い掛けは今までも何度かあった。
「ん〜、わからないけど近い将来か、遠い未来、いつか」
そんな月夜の返答に、
「何の根拠も無く、他者に希望を持たせるような軽はずみな発言は、俺は嫌いだ」
アシュタルは無表情のまま月夜に言い返した。
「私もアシュタルのそういう悲観的な所は嫌い」
頬をぷっくり膨らませてむくれる月夜。そんな彼女の振る舞いは、『死霊使い』としての顔ではなく、年相応の幼さを感じさせる。
羅刹であれば、そんな光景を見て微笑むかもしれないが、
「……俺には無理だな」
自分の耳にすら届かない程の小声でアシュタルは呟く。
「何が?」
が、月夜の耳にはどういう訳か聞こえていたようだ。
怪訝な表情をする月夜に向かって、
「……お前は慈悲深い『死霊使い』、再生の象徴……だが俺は全てを無に帰す『破壊の精霊』……所詮相容れない存在だ……」
禍々しい笑みを浮かべるアシュタル。他人が見たら身の毛がよだつような微笑みだ。
しかし、月夜にはそんなアシュタルの表情は苦しんでいるように見える。
「アシュタル、そんなに深く考えなくてもいいんじゃない?」
こんな言葉はアシュタルにとって何の役にも立たない事は分かりきっている。だが、それでも月夜は言葉を掛けずにはいられなかった。