障子糊が如く

ネクロマンサー15

ネクロマンサー15

「…そうかも、な…」

本音は違うが、月夜なりに自分を励ましていることはアシュタルにもわかっている。苦しいのは自分だけではない。月夜も自分と同じ様に、いや、ひょっとしたら、心の底では両親を失ったことで自分よりも苦しんでいるのかもしれない。

「月夜様、本当にお世話になっています!」

街の人の挨拶に笑顔を向ける月夜。

長年月夜と寝食を共にしているアシュタルにはすぐわかる、作られた笑みだ。

自分は『破壊の精霊』。

……なのに、なぜ月夜の苦しみを破壊することが出来ないのだ!

自分にもっと力があれば、月夜を苦しませる事も無く、自分の主人も救えたはずだ。

楽しそうに街の人と会話をする月夜を見て、アシュタルは己の無力を呪った。

「どうだった、ユート」

「一言で言えば活気のある街だよ。希望が人々の心に絶えず灯されている」

『陽光の精霊』サンの問い掛けに、マスター主人のユートは感じたままに答えた。

「……その希望は偽りの希望だ……他者を犠牲にして得ている……屍の上に築かれた、希望とは呼びがたいどす黒いものだ……」

セインはグラスに入っている水を一気に飲み干した。

やけにぬるく感じる。

「……だが、他者を犠牲にせずに得られる物など、この世界には何一つとして無い」

三人はその声の主の方向に振り向いた。ユートは即座に。サンはゆっくりと。セインはしばらく俯いた後、その声の主の姿を見つめた。

黒髪の長身痩躯の男だ。その頬には大きな傷がある。

セインの見立てでは歴戦の騎士、といったところか。