障子糊が如く

ネクロマンサー23

ネクロマンサー23

「『死霊使い』を殺したのはセイン達だ」と、軍の間者が街の人々に洩らせばセインの部隊が生きて街を脱出出来る可能性はかなり低くなる。しかも相手は『死霊使い』を殺され怒り狂った住人達だ。死を覚悟して突撃してくる相手と策略を巡らす強大な軍。最小限の犠牲ですむとはとても思えない。

「でもこれで相手がこちらの提案を受け入れてくれれば…」

「……戦争は回避出来るわね」

「……軍の情報によれば一日につき、一人の死者を蘇らせている『死霊使い』だからな。どれほどの力を持っているかは知らないが、無償で、そんな自殺行為をする崇高な『死霊使い』だ。『死人返り』にはそれなりの信念を持っているに違いない…」

 よほど強い意志を持っていなければそんな事は出来ないだろう。死者を蘇らせ続ければ、いずれは呪力が尽き、体力も底を尽いて、『死霊使い』本人が死に至る。

 この相手は相当なお人好しのようだ。ひどく気は進まないが、今回はその性格を逆手に取る。ひょっしたら成功するかもしれない。

三人は厳しい表情で街の雑踏の中に消えていった。

一日が終わった。ベッドに疲れきった体を放り出す。

今日はアシュタルと一緒に街を回って見たのだが、今日の彼はいつにも増して何か悩んでいるようだった。

自分が彼の苦しみを癒してあげられればいいのだが。

「……父さん、母さん……私、どうすればいい?」

 

昔は平和だった。幼い月夜はこの世界がどうすることで成り立っていたのかまでは知らなかったが、街が平和だったことだけはよく覚えている。

父、聖は街一番の魔法士であり、精霊使い。

母、ねおん音遠は街でただ一人の『死霊使い』。

二人は一人娘の月夜をとてもかわいがっていた。

この平和がずっと続くと、幼い月夜は思っていた。

だが、その日はやって来た。