障子糊が如く

ネクロマンサー25

ネクロマンサー25

巨大な火球が直接家屋に衝突した。遂に結界が完全に消失したのだ。何かが爆発したような凄まじい轟音と共にその衝撃で地面が鳴り響く。逃げ回る人々の足が一瞬立ちすくむ。

それでも人々はなんとか脱出しようと、ばらばらではあったが、避難し始めた。

音遠も月夜の手を引き、走りだそうとした時、人々の悲鳴が響いた。

上空から巨大な火球がこの地点に落ちようとしていたのだ。

音遠は月夜を抱きしめて眼を閉じた。

凄まじい爆発音が辺りに響く。それと共に火球の破片が周囲の家屋に降り注ぐ。

音遠は恐る恐る眼を開けた。そこには漆黒の衣を纏ったアシュタルがいた。

「逃げるぞっ!」

二人に向かってそれだけを叫ぶ。

街の人々に降り注ぐ火球をアシュタルは呪法を発動させながら迎撃していく。

月夜の手を引きながら逃げる音遠はある気配を感じ、上を見た。

「!」

その瞬時の内に月夜は突き飛ばされていた。月夜は何が何だかわからなかったが、眼に飛び込んできた光景だけは理解できた。

「お母さんっ!」

音遠は崩れ落ちてきた瓦礫の下敷きになっていた。意識はあるようだが、胴から下が完全に瓦礫の下敷きになっている。

月夜の悲鳴を聞きつけ、アシュタルが駆け寄る。

「月夜、どけっ!」

すぐさま、人と比べて異様に爪が長い左手を倒壊した家屋に向ける。淡い光がアシュタルの左手を包む……が……

(呪法が発動しないっ?!)