障子糊が如く

ネクロマンサー28

ネクロマンサー28

月夜にアシュタル、羅刹は街の中心に位置する大きな城に住んでいる。月夜の命を狙う者が絶対にいない、とは限らないという街全体の意見で、月夜の身を守るために街の人々が善意で建設したものだ。ここには月夜を守るべく羅刹を中心とした近衛隊も組織されており、城の中は絶えず警備兵に監視されている。

「これは月夜様」

羅刹の部屋を管理している警備兵は自分の元に歩み寄って来る月夜にさっ、と敬礼した。

「羅刹様に何か御用で?」

「ええ、羅刹さんはここに?」

「いいえ、今日はこちらにはおられません」

しかし、警備兵は首を横に振った。

羅刹が自分の部屋にいないことに月夜は少々驚いた。羅刹は休憩時には必ずといっていいほどこの部屋で休養をとる。食糧目当てで盗賊達が夜襲を掛けた時以外で、夜にこの部屋に彼がいなかったことを月夜は知らない。彼はいつも月夜の身を案じており、わざわざ月夜の部屋から最も近いこの部屋を占領したのだから。

「じゃあ羅刹さんがどこにいるか知っていますか?」

警備兵は再度、首を横に振るのみだった。

「そうですか。すいません」

そう言って立ち去ろうとすると、

「奴ならバルコニーだ」

いきなり背後からアシュタルに声を掛けられた。

月夜は肩をビクッと震わせたあとで、

「び、びっくりした。本当に羅刹さんはバルコニーにいるの?」

手を胸に置いて一息つき、振り向いた月夜はアシュタルが無言で頷くのを見た。

「早く行ってやれ。あいつは何か悩み事があるようだ」

アシュタルはそれだけ言うと音もたてずにその場から立ち去った。