障子糊が如く

ネクロマンサー29

ネクロマンサー29

羅刹は苦悩していた。

これほど悩むのは三年前以来だ。

「……俺はこのことを月夜に知らせるべきなのか、聖?」

羅刹は虚空に輝く星を凝視する。

バルコニーの柵を握り締めながら羅刹は苦悩する。

(俺は……どうすればいい?)

軍とまともに戦えば恐らくはこちらに勝ち目は無い。最初の内は軍相手でも押せるかもしれないが、持久戦に持ち込まれれば十中八九こちらが負ける。そして軍は恐らくは人口調節のために乱戦に持ち込もうとするだろう。

セインの提案に乗るという手もあるが、敵である彼の提案は簡単には信用出来ない。

月夜の命を最優先に考えるのであれば、月夜にこの事を知らせずに、軍にも悟られぬように月夜を辺境の土地に移動させることが最良の策だ。

しかし月夜がこの事態を知れば、彼女が『NO』と言うのは目に見えている。

「羅刹さん、どうしたの?」

羅刹はその声を聞いて相当動揺したのだろう。

「何かあったのか」

月夜の方は振り向かずに簡潔に言う。

「うん。でも羅刹さんも私に何か言う事があるんじゃない?」

羅刹はうまく動揺を押し隠しながら、

「どうしてそう思う?」

やっとの思いでそれだけ言った。

「アシュタルが羅刹さん、何か悩んでいるようだ、って。それに…」

「それに?」

「……羅刹さん、私に隠し事をする時って、絶対私を見ないもん」

夜風が冷たく羅刹を惑わす。

(……俺はどうするべきなんだ?)

月夜の命を優先すべきか。

月夜の意志を尊重すべきか。

アシュタルには相談できない。

彼は主人の意思を尊重するだろう。この事態を月夜に知らせて、判断を待つはずだ。