障子糊が如く

ネクロマンサー30

ネクロマンサー30

時間は無い。軍への返答を明日までには決めなくてはならないのだ。

星は彼の苦悩を嘲笑うかのように輝く。

「羅刹さん、一体何があったの?」

羅刹は意を決して切り出した。

「…月夜お前は『死人返り』に誇りを持っているか?」

羅刹は月夜の方に向き直り、鋭い眼差しを月夜に向ける。

月夜はその眼差しに一瞬気圧されたが、ゆっくりと頷いた。

「自分の死すら……いと厭わないか?」

月夜は再び頷く。

「自分の信念を貫いた結果、この街の人々、兵士……夥しい犠牲が出てもか?」

月夜は返答に窮してしまった。

この街に来た人々を絶望から救いたくて、彼女は『死人返り』を行っているのだ。

そんな彼等を犠牲にすることなど本末転倒だ。

「……軍がお前の命を狙っている……」

羅刹は切迫した表情で月夜に告げた。

「要求はお前の投降だ。命の保障はする、と言ってはいるが……だが投降しなければ軍と街の正面衝突の可能性が高い……個人的にはお前が少数の人間を伴っての脱出が……」

そこまで言いかけて、羅刹は月夜の顔が青ざめている事に気付いた。

無理もない。しかも条件を呑んだとしても、軍が月夜を殺さない保証は無いのだ。

「わかりきっている事を確認するな」

月夜の背後から声が聞こえてきた。漆黒の闇の中から黒衣を纏った男が現れる。

「……アシュタル……」

「軍との全面戦争。それしかあるまい」

アシュタルはそう言い切った。羅刹は厳しい表情で、

「アシュタル、戦闘になったら……」

「犠牲がでると言いたいのか?だが、例え条件を呑んで投降しても、月夜が殺されない保証はどこにも無い。月夜が殺されれば、街の住人が軍に戦闘を仕掛けるのは言うまでもないな。大体、月夜に救われたこの街の住人が、月夜を危険に晒す事を納得すると思うか?