障子糊が如く

ネクロマンサー5

ネクロマンサー5

だが、彼の肉体には幾つもの傷があることを知っている者は、それ程多くはない。

「少し、いいか?」

その男はそう言うと、ベッドまで歩き、そこに腰掛けた。

「どうかしたの、羅刹さん?」

「俺は、アシュタルのようにお前が『死人返り』をすることは反対しない。いや、むしろ賛成だ……だが……」

月夜は右手を力なく挙げて、羅刹の言葉を遮った。

「むやみやたらに『死人返り』をすることには反対だ、でしょ?」

羅刹は無言で頷く。

「『死人返り』は術者の体力を大幅に消耗させる術だ。肉体を構成する土に充分な魔力を与えるだけでも、相当な負担になる」

彼は月夜の顔をしっかりと見据え、

「……今のように乱用していると……最悪の場合、命を落としかねんぞ」

羅刹の言葉に、月夜が俯く。

一年前位まではこの街を訪れる人々もそれほど多くは無く、求められた全ての人々に対し、『死人返り』を行使しても問題は無かった。

だが、ここ最近はその数が異様に多い。どこかでブレーキを掛けなければ月夜の体の方がもたない。

今は、まだそれほど深刻では無い。だがいつかは月夜の体力、呪力に限界がおとずれる。

(……いざとなったら実力行使に訴えてでも……)

羅刹の眼に一瞬だが、鋭い光が浮かぶ。しかし、それは本当に一瞬であった為に、俯いていた月夜にはわからなかった。

月夜は一度溜息をつき、立ち上がる。

そして、部屋の明かりが消えないように、ゆっくりと部屋の窓を開けた。

その先には数え切れないほどの星がまたた瞬いている。

「……お母さんが言ってた。『死んだら人達は、皆、お星様になるんだよ。そして、この大地に生きている人々を天から見守ってるの』って……」

月明りの下で、月夜の肩が僅かに震えたのを羅刹は見逃さなかった。