障子糊が如く

ネクロマンサー8

ネクロマンサー8

「しおん紫苑っ!」

紫苑と呼ばれた男は膝をつき、堰をきったように大量の血をばっ、と口から吐き出した。

辺りに閃光が走ると同時に、天から鳴り響く雷鳴が街の結界を直撃した。

「……がぁっ……!あとは……たの……」

「雄っ!」

聖のすぐ隣りで結界を張っていた魔法士も、言いかけの言葉を残し、大量の吐血をしたあと、その場にずるずると倒れてしまった。

「聖っ!脱出するぞっ!」

最早この場で結界を張っているのは聖ただ一人。

(魔法士全員の力を合わせれば何とかなる、という考えは甘かったか……)

「アシュタルッ!お前は逃げろっ!」

アシュタルは驚いたようにその顔を聖に向けた。

「何を言うっ?!マスター主人を置いて逃げろと言うのかっ?!」

聖がいなければ今の自分はいない。もし彼と出会っていなければ、ただ『破壊の精霊』として、気が向くままに破壊を続けていただろう。自分の恩人と言っても過言ではない聖を置いていくことなどアシュタルには出来なかった。

「逃げるのであれば二人で逃げればいいだろうっ?!」

アシュタルは左手を天に翳し、空間に歪みを生じさせた。巨大な穴は凄まじい速度で火球を吸い込んでいく。

しかし、

「くそっ!きりがないっ!」

アシュタルの呪力も限界に達しようとしていた。

「アシュタル、もし、結界が消失すればどうなる?」

脂汗を流し、聖は正面を見据えたままアシュタルに言葉を掛けた。

「知るかっ!街が壊滅するのは間違いなさそうだなっ!」

吐き捨てるように叫ぶと同時に、巨大な氷の膜を結界の外側に出現させた。聖の負担を少しでも軽くしなければならない。

「……結界が消失すれば街は壊滅……」